楽屋のれんとは?意味や役割、製作時のポイント

楽屋のれんとは?意味や役割、製作時のポイント

「楽屋のれん」とは舞台に立つ俳優や歌手などが楽屋の入口に掛ける暖簾を指します。ファンの一人として、役者やアーティストに楽屋のれんを贈りたいと思っている人もいることでしょう。

本記事では楽屋のれんの意味や役割を解説するとともに、製作時にポイントとなるサイズやデザイン、生地などの仕様について紹介します。製作の予定がある場合、記事で紹介する内容を参考にしてみてください。

贈り物としても人気の「楽屋のれん」とは?

楽屋のれんは、役者や舞台裏のスタッフが休憩する楽屋の入り口に掛けられる暖簾(のれん)です。個室の楽屋をもつ役者や舞台俳優に飾ってもらうために、ファンがプレゼントとして贈る場合もあり、そのデザインやサイズなどはさまざまです。

元々、楽屋のれんは歌舞伎や能楽、落語などにかかわる場で使用されていました。現在は、舞台の俳優や女優などの他、アイドル歌手やタレントまで幅広い範囲に対象が広がっています。

楽屋のれんは、演劇界に携わる人々にとって特別な意味をもつ存在です。身内や親しい間柄の人々から贈られる場合、謝意を示す方法としても用いられます。また、贈る側が楽屋という場所に敬意を示し、受け取る人に対する感謝や応援の気持ちを伝える品として選ばれています。

楽屋のれんが持つ役割や意味

芸能人や役者の楽屋のれんは、外部からの視線を遮る「間仕切り」の役割を果たしています。
公私の区別といった役割も含めて、下記のように4つの働きがあります。

  • 公私を仕切る
  • 役者やスタッフのプライバシーを守る
  • 役名を表示する
  • 文化的な要素を示す

演劇の世界において、楽屋のれんは公私を分けるものとされ、舞台上で演じる役やキャラクターと普段の自分との切り替えをサポートします。のれんを掛けることによって、役者は「より良く演じ、成長しよう」と自身を鼓舞する場合もあるでしょう。役者やスタッフの緊張や役作りなど、非公開の様子を外部から見えないようにする重要な役割もあります。

また、楽屋のれんに役者の名前や演じる名前が書かれていることで、その楽屋に誰がいて、どの役を演じているのかが一目でわかる点も重要です。内と外との効率的なコミュニケーションを可能にします。

他にも、楽屋のれんは演劇の文化的な要素が含まれています。特に、のれんのデザインは演目や役のイメージを表現する要素として重要です。たとえば、歌舞伎界の楽屋のれんは鮮やかなカラーやデザインが描かれ、役の特徴を表現します。同様に、落語の楽屋のれんには落語家の名前や屋号などが描かれ、芸能界でのステータスや相関関係を示す場合もあります。

楽屋のれんは演劇界に関わる人々にとって重要な意味をもち、舞台裏の世界を彩る特別な存在です。役者やスタッフにとって、楽屋のれんはプライベートとパフォーマンスの間での重要な境界線となり、個々の役者にとって役のオンとオフを切り替える手助けとなります。

楽屋のれんを製作する時のサイズや仕様

楽屋のれんの製作は、名前や文字の内容、その人をイメージさせる色やデザインまで、細かな点までこだわって作れるのが良いところです。

楽屋のれんは、一般的なのれん製作会社に依頼して作成することができます。業者によって取り扱っている印刷方法や生地などが異なるため、希望する仕様を取り扱っている業者を探しましょう。なお、楽屋のれんの生地には、おもに綿や麻、ポリエステルなどが使われます。また、インクジェットプリンターでフルカラーやグラデーションの印刷も可能なものがあり、写真やイラストなども印刷できます。

以下より、楽屋のれん製作のポイントとなるサイズや仕様(生地や印刷方法)、デザインについて解説しますので参考にしてみてください。

楽屋のれんのサイズ

楽屋のれんは縦140~180cm×横90~100cmほどの縦長サイズが使われるのが一般的です。ただし、横のサイズについてはのれんの設置場所によって多少前後します。通常、横の長さはのれんを掛ける棒より20cmほど短く作成するため、のれんの設置場所や棒の長さを測定したうえで、実際の長さを決めると良いでしょう。

家庭の間口は65~80cmほどですが、楽屋は90~100cmを超える間口サイズも多くあります。これは、楽屋の入り口が役者の衣装の兼ね合いもあり広めに設計されていることが多いためで、中には間口が110cmの場合もあります。

せっかく作成しても、のれんのサイズが場所に合わなかったり、逆に目立ちすぎてしまったりすることは避けなければなりません。平均的に見て楽屋のれんの高さは約150cm、横幅は約100cm程度のものがよく見られますが、とくに横の長さについては細心の注意をはらいましょう。

楽屋のれんのデザイン

楽屋のれんのデザインには基本的なパターン(レイアウト)があり、一般的なデザインとして下記の要素をもとに構成されています。

  • 役者の名前:右上に「〇〇さん江」
  • 贈り主の名前:左下に「贔屓(ひいき)より」「「〇〇を応援する会(後援会)より」などのフレーズ
  • シンボル的なデザイン:真ん中にイラストやロゴ、家紋など
楽屋のれんのデザインの例

まずは役者の名前が右上に「〇〇さん江」という形で入ります。「へ」とせず「江」とする理由は、一説によれば「へ(屁)」を避け失礼にあたらないようにするためです。贈り主名には、役者への支援や応援のメッセージを表現する意味が込められています。

楽屋のれんの中央には、役者に関連するイラストやロゴ、家紋などが配置されます。なかには、特定の役割や作品をイメ―ジさせるデザインが施される場合もあり、デザインの大きさもさまざまです。

昔はアナログ的な方法でしかできなかった本染めも、最近ではデジタル染色技術を用いた染色法によってデザインに制約がなくなっています。このため、複雑で凝ったデザインを楽屋のれんに取り入れることが可能になり、伝統的なデザインから洗練されたシックなカラーのものまで選択肢が広がっています。

楽屋のれんのデザインに関しては、のれんの用途や贈り主の思い、受け取る人の好みやイメージなどを考慮してアレンジができるでしょう。

なお、のれんの伝統的な考え方として、のれんの幅を「巾」と呼び、奇数の巾数が縁起が良いとされてきました。奇数の巾数は割り切れない数で「余りが出る(余裕がある)」とされることから商売繁盛に縁起が良いとされています。楽屋のれんは2~3巾で製作される場合がほとんどですが、受け取る側の意向をさりげなく聞くなど考慮してみてください。

楽屋のれんの素材

楽屋のれんに使用される生地は、絹、綿、麻、ポリエステルなどがあります。それぞれの特長について紹介します。

  • 絹:高級感があり柔らかな質感が特徴で、上品な光沢がある
  • 綿:透けにくさと柔らかい肌触りが特徴で、サイズの自由度が高い
  • 麻:清涼感があり縮みにくい点が特徴で、綿素材よりも風合いが硬い印象がある
  • ポリエステル:生絹に似た風合いがあり耐久性にも優れ、フルカラーの対応も可能

以上の生地のほか、織り方によってさまざまな風合いや光沢感、凹凸などを実現できます。業者によって扱っている素材は異なるため確認が必要です。なお、絹は高級感や風合いが魅力ですが、デザインに一定の制約が生じる場合もあり、価格が高い傾向にあります。

楽屋のれんは役者への贈り物の伝統的なアイテムから、アイドルや歌手へのプレゼントとしても選ばれています。伝統を尊重しつつもデザインの幅は広がり、用途や好みに合わせたオリジナルのデザインを実現できます。

デザインや生地の選択には贈り主側の思いや受け取る側の好み、希望を考慮し、サイズやデザイン、生地などをのれん業者と相談することが大切です。楽屋のれんを贈ることで、舞台やステージの成功を祈願し、感謝や応援の気持ちを伝えましょう。