のれんに使われている様々な和柄や和風の模様!

のれんに使われている様々な和柄や和風の模様!

のれんには看板や日除け、目隠しや仕切り、装飾などの幅広い用途があり、そのデザインは非常に豊富です。中でも、のれんの歴史が古いこともあり、和柄・和風の模様はポピュラーなデザインの一つだと言えるでしょう。

この記事では、のれんに使われる和柄や模様、モチーフにフォーカスし、代表的なものをご紹介しています。これからのれんを飾りたい、作りたいと考えている方は、デザインのヒントとしてチェックしてみてください。

和柄とは、線や図形を組み合わせて作った模様を規則正しく並べたデザインのことです。平安時代中期から様々な和柄が生まれては流行、定着し、現在でも着物や和雑貨などをはじめ、日常のあらゆる場面で使われています。

和柄は70種類以上あると言われており、それぞれ由来や意味があります。ここでは、デザインに使われることが多い和柄を8つピックアップし、以下にご紹介します。見た目の好みももちろん大切ですが、由来や意味を知ることでお気に入りの和柄・模様が見つかるかもしれません。

市松模様

市松模様は、二色の正方形を交互に並べたデザインで、「石畳紋」とも呼ばれています。江戸時代の歌舞伎役者である佐野川市松が身に付けた袴の柄だったことから、市松模様という名前がつきました。柄が途切れずに続くことから「繁栄」や「発展」という意味が込められており、縁起が良いとして好まれている和柄の一つです。

市松模様を使ったのれんのデザイン例 亀甲

亀甲は、名前の通り六角形を亀の甲羅のように繋げた模様です。「長寿」や「健康」の象徴である亀に由来しているので、縁起の良い吉祥文様として愛され、長く継承されています。

亀甲をベースとして派生したバリエーションが多いのも特徴の一つです。六角形が二重になった「子持ち亀甲」、六角形の中に花をあしらった「亀甲花菱」、六角形を三つずつ組み合わせた「毘沙門亀甲」などが挙げられます。

亀甲模様を使ったのれんのデザイン例 網目文

網目文は、一定間隔で交差する曲線が美しいシンプルな模様です。漁で使用する網の目を連想させるため、網目文という名前で呼ばれています。江戸時代に流行し、魚などを網目文と組み合わせた「大漁文」という柄は漁業関係者に好まれました。網からの連想で「幸せをすくう」、「福を絡めとる」、模様の連続性から「永遠」という意味が込められています。

網目文を使ったのれんのデザイン例 青海波

青海波は、半円を連続させることで波を表現した模様です。雅楽の演目である「青海波」の衣装にこの模様が描かれていたと言われており、名前の由来とされています。穏やかな波が途切れることなく続いていることから、「未来永劫平穏に暮らせるように」という祈りが込められています。

青海波を使ったのれんのデザイン例 麻の葉

麻の葉は、植物の麻の葉を三角形や六角形で表現した幾何学模様です。麻は成長する速度が早く、丈夫でまっすぐ伸びるため、子供の健やかな成長を祈る際の魔除けに用いられます。加えて、三角形は古くから厄除けの象徴とされています。三角形で構成された麻の葉模様は、邪気払いとして産着やお守りに取り入れることが多かったようです。

麻の葉を使ったのれんのデザイン例 七宝つなぎ

七宝つなぎは、同じ大きさの円、または楕円を四分の一ずつ重ねて連続させた模様です。円の四方が繋がっているので「四方つなぎ」と呼ばれていたものが、時代と共に「七宝つなぎ」に変化したと言われています。七宝とは、仏教の経典に登場する金や銀、水晶や珊瑚などの宝のことを表します。円=縁とし、「人の縁や関係性が繋がる」ことを意味する縁起の良い模様です。

七宝つなぎを使ったのれんのデザイン例 雷紋

雷紋は、直線で描いた渦巻きのような幾何学模様で、稲妻を表現したものです。中国をはじめ、ギリシャやローマでも古くから使われている模様で、日本でも弥生時代の土器の装飾として用いられています。九谷焼を取り扱う陶器専門店が雷紋を入れたどんぶりを作ったことから雷紋とラーメンが結びつき、現在ではラーメン屋の鉢やのれんにお馴染みの模様になりました。

雷紋を使ったのれんのデザイン例 立涌文様

立涌は、向かい合った波線が縦に規則正しく並ぶ伝統的な和柄で、水蒸気や雲、陽炎が立ち昇る様子を表現したものだと言われています。多少線がずれても目立たないので、刺し子のデザインとしてもおすすめです。

バリエーションも多く、波線が膨らんだ箇所に花や雲を描いた「花立涌」や「雲立涌」、線を竹や蔓で描いた「竹立涌」や「藤立涌」、線が途切れている「破れ立涌」などがあります。

立涌文様を使ったのれんのデザイン例

上記では、線や図形を組み合わせて作る和柄についてまとめました。続いて、和柄以外でのれんのデザインに用いられることが多い絵や和風モチーフをご紹介します。

浮世絵はのれんのデザインにおいてよく使用されるモチーフの1つです。江戸時代を中心に流行した葛飾北斎や歌川広重などの浮世絵師が描いた美人画や役者絵、風景画には、独自のインパクトと魅力があります。のれんにして掛ければ、一枚で場の雰囲気や印象を変えてくれるでしょう。

京都市右京区の高山寺に伝わる紙本墨画の絵巻物「鳥獣戯画」も、様々なアイテムに用いられているモチーフです。墨一色かつ筆で描かれたウサギやカエルなどの動物は、色も奥行きもないことでコミカルでキャラクター然として見えます。のれんの生地の色や素材を変えることで、さまざまなテイストののれんに仕上げることができるデザインです。

桜や梅などの植物、富士山や松林などの風景、鶴錦や鯉といった日本ならではのモチーフも、のれんのデザインとして使われています。縁起が良いとされているものをデザインしたのれんは、和柄同様に意味や願いが込められています。例えば、五穀豊穣や繁栄を表す「桜」、不老不死や無病息災を願う「菊」、開運招福や長寿を表す「松」、発展や拡大を意味する「扇」などが挙げられます。

のれんに使われることが多い和柄や模様、モチーフについて解説しました。日々の暮らしの中で目にしたことがあるデザインもあったのではないでしょうか。

普段何気なく目にしている和柄やモチーフですが、それぞれ意味や由来があり、古くから愛され継承されています。デザインそのものももちろん魅力的ですが、背景を知ることでのれんやデザイン選びが一層楽しくなります。今回ご紹介したもの以外にも多くの和柄、モチーフがあるので、お気に入りを見つけてみてください。